・伊勢音頭(祇園ばやし)
この週末は村の秋祭りで、 うちの方では太鼓を載せた「布団屋台」と呼ばれるタイプの屋台が、 氏子のいる地域を巡航することになっている。
と言えば厳かな行事っぽく聞こえるけど、 うちの神社は近隣の7つの村の神社をまとめた神社になっているもので、 巡航すべき地域はすさまじく広く、宵宮、本宮の二日とも、 朝の8時すぎから夜の20時すぎまで、それぞれ十数キロを練り歩くという耐久競技のようなイベントになっている。
# 持ってたガラケーに歩数計があったので調べてみたら、一日目は29000歩、ニ日目は22000歩くらい歩いていた。
加えて、両日とも、最後には「宮入り」「蔵入り」と称して、1tを越える屋台を肩にかついで神社までの坂道を登ったり、境内では屋台を頭上まで差し上げて氏子の力と団結力を示したりと、ひたすら体力勝負なイベントだったり。
巡航の際には、屋台に載せた太鼓を叩きながら、 「祇園ばやし」とか「伊勢音頭」と呼ばれる唄を歌いながら行くのだけど、 その唄も神社ごとにそれぞれ個性があるようで、なかなか面白いことになっている。
昔から日本人は伊勢神宮を「お伊勢さん」と呼んで崇拝していて、 伊勢神宮に参るために「伊勢講」という名でお金を積み立てて、 何年かに一度伊勢神宮に参拝することが楽しみだったようなんだけど、 その際に伊勢神宮近辺の歓楽街(というか遊廓)で流行り唄を習ってきて、 それを「伊勢音頭」や「祇園ばやし」という名で祭の時とかに唄っているらしい。
元々が歓楽街の流行唄なんで、バリエーションは無数にあるようだけど、 うちの方で唄っているのは以下の7種類。
1)めでたナァ、めでたナァ、若松さまョー 枝もナァ栄える、葉も茂る
2)坂はナァ、照る照る、鈴鹿は曇る、 藍のナァ土山、雨が降る
3)竹にナァ、雀は、品よくとまる、 止めてナァ止まらぬ、色の道
4)伊勢はナァ、津でもつ、津は伊勢でもつ、 尾張名古屋は、城でもつ
5)吉田ナァ、通れば、二階から招く しかもナァ、鹿の子の振袖で
6)紺のナァ、館は、めでたい館 鶴がナァ、御門に巣をかける
7)御坊所ナァ、ケツショナァ、いうて鳴く鳥は、 鳥の中でも、スケベ鳥
このあたりを見ると、 それこそ100種類以上のバリエーションがあるようなんだけど、 たまたま隣の神社の屋台太鼓と練り合わせをする際に見てみたら、 そちらでは5種類くらいを使っていて、4つまでは同じだけど、 1つは異なる歌詞だった。
もう一つ隣りの神社だと、上記の1)の歌詞を「開け」と称して別扱いして、 残りは3種類で、2つは重なるけど、3つ目は違う歌詞だった。
メロディはかなり違ってきているので、定量的に評価することは難しいけど、 ある時期にこのへんに伝わった「伊勢音頭」が、 取捨選択を受けつつ、それぞれの神社ごとに定着していく過程を考えると、 ダーウィンが調べたガラパゴス島のフィンチ類みたいな話ができるかも知れない。